1. HOME
  2. ブログ
  3. 特集「M&Aを正しく活用する時代」
  4. 第9講 M&Aの世界は、なぜあらゆるところが秘密のベールに包まれているのか?

記事

特集「M&Aを正しく活用する時代」

第9講 M&Aの世界は、なぜあらゆるところが秘密のベールに包まれているのか?

M&Aは、その正確な成立数すら把握ができないベールに包まれた世界

M&Aを経営戦略として投資に活用する会社は、大きく事業会社と、投資ファンドに分かれます。

僕自身は、アメリカで世界に現地法人を展開する大手の金融系経営コンサルティング会社と契約をして仕事をしていた関係で、アメリカでは、主に投資ファンドの投資担当者の立場で、M&Aに関わってきました。そして、日本に帰国後は、日本の大手事業会社で、M&Aによる買収に関わってきました。M&Aによって企業を買収し、グループを大きくしてゆくことの戦略を担ったわけです。

そんな経験から、投資ファンド・事業会社、その投資スタンスや、投資対象の違いなど、よく比較ができるようになりました。

事業会社であれ、投資ファンドであれ、共通することは、その内部では自分が取り扱っているM&Aに関する情報は、社内でも絶対的に「機密事項」であるということです。事業会社の場合、特に会社内の社員の方々の中には、結構M&Aの情報を知りたがって、その部門に近寄ってくる人もいます。それでも、僕たちは絶対的にM&Aの案件の具体的情報を秘密にします。

一方、M&Aの仲介や、アドバイザリー業務を行う、URVグローバルグループでは、M&Aの機密を守るため、M&Aの案件については、グループ最高経営責任者である僕だけが取り扱う業務と位置付けており、一切、他の役員や社員はその活動を知りえない、鉄壁の情報機密を維持しています。M&Aの活動内容は、僕のグループウェアの予定にも入力されておらず、僕がM&Aアドバイザリー業務で、どこの企業の案件を扱っているのかは、グループ内の社員やパートナーの誰も、知りえないようになっています。

このように、M&Aの主体がそれぞれ機密を守る結果、M&Aの成立案件数などの情報についても、実態はわかりません。レコフから公開されているデータはありますが、業界では、この公開数にカウントされているのは、公開義務がある上場企業が絡んだM&A案件数だけであって、実際の成立案件数は、この倍以上あるのではないかと言われています。

M&Aはその正確な成立数すら、把握ができないベールに包まれた世界なのです。

URVグローバルグループのM&Aアドバイザリー事業

成長企業M&A

成長企業M&Aとは、成長期にあるベンチャー企業や中小企業と投資企業を仲介し、飛躍的成長を遂げるために、M&Aという手法で資本提携関係を結ぶ手法です。

URVプランニングサポーターズが提供する「成長企業M&A」で、企業の成長力・資金力を飛躍的にアップし、事業成長の壁を打ち破ります。

URVグローバルグループのM&Aアドバイザリー事業詳細はこちら

M&Aが「機密の塊」なのは、売り方企業にとっても、買い方企業にとっても、それが会社の運命を左右する重大事項であるとともに、会社に関係する利害関係者の人生や事業の未来を左右する事項であり、そのために、これらの利害関係人によって、M&Aの成立を阻害されるおそれがあるためです。

その最大の利害関係人は、売り側企業の役員や社員たち、そして売り側の顧問税理士などの人たちです。

株式を保有しない役員や社員たちにとって、M&Aはそれまでの人生で想定していなかった大資本が、自分たちの会社を突然支配しにやってくる災難以外のナニモノでもありません。人間にとって、自分たちが想定していない現状変更は、恐怖の対象でしかなく、彼らがM&Aが自分の会社で動いていることを知ればデマが流れ、不安にかられた一斉退職にも繋がりかねません。

それでは、M&Aの買い側からみた会社の価値そのものが減少してしまいます。そのため、M&Aでは特に売り側企業では、その動きを絶対的に情報を封じて行わなければなりません。

M&Aサイトに、「よい売り案件」がない理由

最近、M&A情報サイトが多数現れています。しかし、M&Aの買い側の優良な企業は、サイトで公開されている企業を閲覧をしても、手は出しません。情報サイトなどの掲出されている案件を、M&Aのプロたちは、業界用語で、「出回り案件」と呼び、買いの対象とはしないのです。

M&Aサイトでは、会社名を伏していたとしても、売り側の役員や社員がみれば、それは自分の会社であることがわかってしまいます。もし、自分の会社の社員がみても、自分の会社の情報だということがわからないレベルの情報開示では、買い方企業が検討すらできません。

そのため、思慮が少しでもある売り側の経営者が、M&Aサイトで自分の会社と推測される情報を出すはずがありません。M&Aは、Webマーケティングが普及しても、その機密保持性ゆえに、Webのような情報公開性ある仕組みに合わない世界なのです。

そのため、M&Aサイトは、よい売り案件が掲示されていないというのが、M&Aのプロたちの悩みになっています。

僕も、M&Aサイトに出ている売り企業には、アドバイザリーなどの営業行為で、手を出しません。

スタートは、機密保持契約から

さて、そんな事情で、機密だらけのM&Aという世界に足を踏み入れるとき、売り方にせよ、買い方にせよ、仲介やアドバイザリ-を取り扱う僕たちのような企業にせよ、スタートは、機密保持契約(NDA)の締結から、というのが鉄則です。

機密保持契約の締結と遵守をせずして、一切のM&Aの情報を、誰も入手することができないというのが、M&Aの世界です。

僕らアドバイザリー会社が、売り方の企業様から、初対面でお話をお伺いする場合でも、「差し入れ型」と呼ばれるNDAを署名捺印して売り方の社長にわたすことが鉄則です。この差し入れ型のNDAというのは、当事者双方が守秘義務を負うのではなく、差し入れた当事者が一方的に相手方に対して機密保持義務をおうという趣旨の申し入れ書です。

M&Aの相談を業界の関係者にする場合、その相手方が、差し入れ型M&Aに署名捺印して初対面で持参しない場合、その相手方には、絶対に自社のM&Aに関する事情を話してはいけません。

差し入れ型NDAを持参せずに、面会しに来たり、Zoomなどで気軽に打ち合わせをしようとする相手は、M&Aの素人(あるいは、怪しいブローカー)だと判断して、一切、詳しい話を開示してはなりません。

M&Aは、買い方にとっても、売り方にとっても、会社の重大事にあたります。そのため、信頼のおけない、いい加減な仲介業者やブローカーをかませることは、非常に危険です。

そして、この機密保持契約の中には、機密を漏洩した場合のサンクション規定もしっかり入っています。

例えば、株式会社URVプランニングサポータ-ズがお客様に提供して締結するNDAには、以下のような条項が規定されています。

買収企業及び売却企業向け 機密保持契約書

第3条 甲又は乙が、本契約に定める義務に違反することにより相手方に損害を与えた場合、相手方に対し、直接生じた通常の範囲で損害賠償の義務を負う。

機密保持義務に反して、情報を漏洩することは、「本契約に定める義務」に違反することとなり、損害賠償責任を相当因果関係の範囲で負うということを既定しているのが、この規定です。

機密保持に違反したサンクションを伴うことを覚悟して、一切の仕事を行うのが、M&Aの鉄則となります。

時々、出現する「売りを役員に相談してしまう困った社長」

M&Aは、企業の成長のための資金調達手段として新株発行を行う手法であるとともに、最終的な企業の事業の承継先を定める、非常に重要な手法です。

株式を持たない役員や従業員にとって、M&Aは雇用を継続し、自分の会社が発展するための契機になるものです。

しかしながら、非公開会社である中小企業の役員や従業員の目には、M&Aなどというものは、まったく「人生の想定外」の事件に移ってしまいます。株主である社長だけが、会社を売って、一人大儲けをして、ゴールデンパラシュートで降りていく、という印象を抱く人が大半であり、会社の将来と自分の将来を冷静に考え、大きな資本に買われたほうがよいと冷静に考える人は、むしろ少数派です。

そのため、M&Aを社長が検討しているという噂だけが独り歩きし、役員や従業員のモチベーションを低下させ、最悪は、従業員が集団で退社してしまい、会社が立ち行かなくなることもあります。そのため、M&Aを検討する売り側の社長は当然のこととして、仲介やアドバイザリーを務める会社や、買い側の関係者は、絶対に売り側の株式を持たない役員や社員に、M&Aの進行を秘する必要があります。

僕の過去の経験では、愚かにもオーナー社長が、自分から役員会に「M&Aで会社を売りたいが、どう思う」と諮ってしまい、役員陣と顧問税理士の猛反対を受けて、M&Aをあきらめざるをえなくなる、ということになったケースもあります。

株式の最終決済後まで、自分の意志でM&Aを進める勇気がない、というのが、この社長が情報を漏らした理由でした。もし、このような情報を漏らして、M&Aに賛成する役員がいるとすれば、それは逆に「どんな会社が買いに来ても、今の社長よりはマシ」と思われているということで、それこそが最悪なことです。

そうでなければ、役員や従業員が不安にかられて反対するのが当然ですし、反対にあって頓挫をすれば、資金調達や事業承継の道を閉ざして、会社の未来に暗雲がたちこめることになります。

デューデリは、極秘のうちに進む

売り方の社長にとって、機密を要する相手の中で、特に注意をしなけれなければならないのが、顧問税理士です。

M&Aが成立すると、普通の買い側は、信頼ができる自社の会計事務所や監査法人を送り込んで、買収企業の財務を掌握します。したがって、売り側企業の顧問税理士は、M&Aが成立すると、顧問先を喪失することになります。そのため、M&Aには社員以上に猛反対するケースが多いのです。

ただ、M&Aの手続きの中で、基本合意契約が終わったのち、クロージングと呼ばれる最終段階までに、通常、買い方の企業による、財務・法務・ビジネスの各分野にわたるデューデリジェンス(以下、DDと称します)が行われます。

このDDの財務分野のDDでは、顧問税理士の関与が欠かせません。もっといえば、顧問税理士が行ってきた財務・税務の業務の詳細を、売り方が送り込んできた監査法人や会計士が、調査を行い、不適切な部分を洗い直し、買収のリスクを洗い直すのが、財務DDです。

法務DDでは、法務面や労務面で、買い方の顧問法律事務所が、リスクを洗いだします。このDDは、ある意味、基本合意契約までに成立した買収金額を出す価値があるのかどうかを、買い方が、売り方を丸裸にして調査を行うことを意味します。

この段階では顧問税理士には、M&Aの手続きに協力をえなければなりません。

したがって、顧問税理士や弁護士・社労士に、M&Aを行うことを伝えるのは、基本合意契約が成立した時点ということになります。経理や、法務・労務などの部長クラスの責任者にも、基本合意契約成立時に、しっかりと機密保持を確約させたうえで、M&Aを行うことを伝えます。

もちろん、基本合意契約時点では、他の従業員や役員には、DDを実施することは機密として扱います。

DDは、売り方にとって、買い方が設定したDDを受けながら、従業員に機密を保持しなければならない、非常に苦しい手続き時期です。

この時期に、売り方の社長をしっかり支えるのが、売り方につくM&Aアドバイザリーです。財務・税務・法務・労務やビジネスなど、広範囲の企業の知識に精通した、プロのM&Aアドバイザリーをつけていないと、この段階で売り方の社長は苦しい目にあいます。

成長企業M&Aサービスのご紹介

強い成長を目指す企業(成長企業)と、投資によってスピードある新規事業の参入を目指す企業(投資企業)の、資本提携をM&Aの手法で実現する成長企業M&A

成長企業M&A

成長企業M&Aとは、成長期にあるベンチャー企業や中小企業と投資企業を仲介し、飛躍的成長を遂げるために、M&Aという手法で資本提携関係を結ぶ手法です。

URVプランニングサポーターズが提供する「成長企業M&A」で、企業の成長力・資金力を飛躍的にアップし、事業成長の壁を打ち破ります。

成長企業M&Aサービス詳細はこちら

このように、M&Aは、最後のクロージングが終了するときまで、機密事項として進みます。これが、M&Aが機密のベールに包まれている理由なのです。

続く

本稿の著者

松本 尚典
URVグローバルグループ 最高経営責任者 兼 CEO
株式会社URVプランニングサポーターズ代表取締役 兼 エグゼクティブコンサルタント

松本 尚典

  • 米国公認会計士
  • 一般財団法人M&Aアドバイザー協会認定M&Aアドバイザー

日本の大手銀行から、ニューヨーク ウオール街での金融系コンサルタント業務を経験した後、日本に帰国し、国内の大手企業数社の役員の歴任。この間、M&A大国アメリカで、数多くのクロスボーダーM&Aや、TOB案件を纏めあげ、そしてまた、日本でも多くのM&A案件を投資企業側の責任者として纏めた、豊富なM&A実務経験を有する。
2015年にURVグローバルグループのホールディングス会社で、経営支援事業を本業とする、株式会社URVプランニングサポーターズ(松本尚典が100%株主、代表取締役)を設立。多くの中小企業の経営者の経営顧問や監査役として、中小企業の成長戦略に関わる。
こうした業務の中で、投資企業側の事情と、投資を受ける中小企業側の事情の双方に精通する知識と経験を活かし、成長企業への投資案件に特化した、成長企業M&A事業に進出する。

  • 成長企業M&A・資本提携

    強い成長を目指す成長企業と、投資によって新規事業の参入を目指す投資企業の、資本提携をM&Aの手法で実現する。

  • 「M&Aを正しく活用する時代」過去の記事はこちら

    第1講 世界のM&Aを知ろう

    第2講 今、うちの会社はいくらなの?~企業のバリュエーション~

    第3講 株主が複数いる企業が行う、M&Aへの対策 ~スクイズアウト~

    第4講 M&A買い側企業担当者の心得

    第5講 株式譲渡と事業譲渡、その戦略的な活用法

    第6講 会社の資金がショートしてから、慌てて調達に動くと大変なことになる!

    第7講 M&Aでは、何故PL上の利益よりも、EBITDAを重視するのか?

    第8講 黒字が出ている会社のオーナー社長が、M&Aで金持ちになるのは何故か? ~本当の金持ちになるヒトは、所得税の構造に潜む、カラクリを利用している~

    第9講 M&Aの世界は、なぜあらゆるところが秘密のベールに包まれているのか?

    第10講 事業譲渡をする会社はここに気を付けよう ~そのメリットとデメリット~

    第11講 M&Aを考えるすべてのヒトが知らなければならない天王山 デューデリジェンス

    第12講 M&Aで会社を売る場合、セカンドオピニオンを求めよう

    第13講 M&Aの仲介 専任と非専任 どっちが有利?

    第14講 中国企業や中国資本のM&Aや投資を恐れず、活用しよう

    第15講 事業承継や資金調達で、M&Aを使う場合は、政府の登録機関に相談しよう

    第16講 日本で増加してきた「同意なき買収」 米国に近づいてきたM&Aの今を概観する

    関連記事